「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」はイギリスでベストセラーとなったノンフィクション書籍「ボブという名のストリート・キャット」を実写化した映画です。
薬物依存症に悩まされどん底のホームレス生活をしていた主人公が猫のボブと出会ったことで、人生をやり直していくセカンドサクセスストーリー。
誰もが彼らの姿から希望をもらえるのと同時に、薬物依存の恐ろしさを垣間見ることも…。
そんな恐ろしさを中和してくれるかのような可愛さと癒しのパワーを放つ猫のボブ。
劇中に猫目線で描かれる技法も斬新です。
現代社会を生きる上で必須鑑賞とも言える、この映画のあらすじや感想をどこよりも詳しく紹介します。
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映画「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」の作品情報
【公開日】
2017年8月26日
【上映時間】
103分
【監督】
ロジャー・スポティスウッド
【制作総指揮】
ポール・ブレット
ティム・スミス
【キャスト】
ジェームズ・ボーエン:ルーク・トレッダウェイ
ベティ:ルタ・ゲドミンタス
ヴァル:ジョアンヌ・フロガット
ボブ:ボブ
映画「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」ネタバレあらすじとラスト結末
ロンドンの中心街に佇むコベントガーデンで、歌うストリートミュージシャンの若者ジェームス。
彼は、ホームレス同然の生活をしていた。
食べる物はなくその日の寝る場所もない。
お腹を空かしたジェームズは、ファストフードの店にいくも3ポンド(約500円以下)さえ払えないうえに、店員からは二度と来るなと罵声を浴びる始末。
底辺の生活を送っていた。
ジェームズは薬物依存から更生診察中だったが、ある晩、ホームレス仲間のパズから誘惑され、薬物を再摂取してしまった。
そのままジェームズは意識を失くして病院に搬送されたのだった。
病院のベッドの上で目を覚ましたジェームズ。ジェームズ担当の薬物依存専門医のヴァルも駆けつけ、ジェームズは泣きながら自分の行為に反省し失望した。
その姿をヴァルはただ冷静に眺めるのだった。
茶トラ猫との最初の出会いとそれから
ヴァルのおかげで、ジェームズは住居部屋を与えてもらえた。
彼はお湯が出ることに興奮し自分の部屋を心から喜んだ。
その夜、1匹の茶トラ猫が部屋に迷い込んできた。
ジェームスは飼い主が猫を探しているに違いないと心配し、猫にもそのことを伝え「一晩だけだよ」と、一夜だけ猫と過ごした。
翌日ジェームズは猫の飼い主を探したが見つからず、そのまま飼い主が見つかることを願ってジェームズは猫を外に返した。
翌日、いつものコベントガーデンの駅前で歌うジェームズ。駅員に叱られ追いやられる姿を遠くから偶然、父が見ていた。
ジェームズは父の姿に気づき、駆け寄った。
今度のクリスマスに家族団らんできるのが楽しみだと伝えるも、父の再婚妻がジェームズの存在を許しておらず、ジェームズは家族の一員になれていないことをただ再確認するだけであった。
父は彼を心配するも、新しく手に入れた今ある幸せを壊したくない。
父はジェームズに20ポンド札を渡してその場を去るのだった。ジェームズは、どこまでも孤独だった。
家に帰ると、昨日の猫が怪我をして玄関の前にいる。
ジェームズは猫をそっと抱いて、また飼い主を探した。
同じアパートに住む、派手な髪色と化粧の女の子に「この猫の飼い主ではないですか?」と尋ねると、女の子はそのまま猫とジェームズを部屋に招き、すぐに傷の手当をした。
「この子の家はあなたの隣。理由があってそこにいるのよ」と彼女は言い、また猫の名前はボブだとも言う。
彼女は動物と話せるらしいのだった。
彼女からボランティア動物病院の診察券を貰い、病院で治療を受けたボブ。
治療は無料だが、その後の薬は有料。父が託した20ポンド札で、薬が購入できたものの、ジェームズの所持金はまたゼロになってしまった。
ボブとの暮らし、生活に変化が起き始める
抗生物質薬をボブに飲ませるのに一苦労のジェームズ。
ジェームズは手当てをしてくれた彼女に助けを求めると、いとも簡単にボブに薬を飲ませるのだった。
彼女の名前はベティ、彼女は動物の言葉がわかるのに動物アレルギーというなかなか変わった女の子だった。
そして、彼女は薬物依存患者には警戒し、近づかないようにしていた。
ジェームズは自分が薬物依存者だということを隠して売れないミュージシャンだと嘘をついてしまう。
ヴァルはこのことを心配していた。
依存症患者にとって友人という感情を作ることは、ジェームス本人に危険を伴うからだ。
交友関係を築くことを止めるように注意するのだった。
ジェームズはボブと暮らすようになった。
友達が作れない分、ボブはジェームズの孤独感を紛らわすのだった。
ゴロゴロとノドを鳴らすボブは、ジェームズの心を癒していた。
そんなある日、ジェームズはいつものコベントガーデンで歌を歌うためにバスに乗ると、ボブもバスに乗り込み着いてきてしまった。
仕方なくボブを肩に乗せ街を歩くジェームズ。
ボブのかわいさから街の人々から声をかけられ、写真を撮られ、たちまち人気者に。
ボブが肩に乗ったり、ギターに乗ったりしてジェームズのそばを片時も離れない姿はとても愛らしかった。
そしてギターを鳴らし、歌う曲は全て希望に溢れたハングリー精神のある強い歌ばかり。
聴衆たちは、自然にジェームズの歌に注目し、聴いているのだった。
その日のストリートライブでは今までにないくらいの稼ぎだった。
ジェームズは、ボブに「ハイタッチだ!」と手をボブの前にかざすと、その手にハイタッチをするボブ。
2人の中にも歌詞にぴったりな希望に満ち溢れていた。
ボブのおかげで、一歩ずつ更生し明るさを取り戻すジェームズ。
交友関係を築くことは注意されていたがベティからの手料理を振る舞ってもらったり、着実に生活が変わっていた。
幸運の階段、歪み崩れる音
しかしある夜事件は起こる。
ホームレス仲間だったバズがジェームズに物乞いをし、お金を与えてしまったジェームズ。
バズはその金で薬物を買い、過剰摂取で死んでしまった。
現場に駆けつけたジェームズとベティ。
このことがきっかけでジェームズはベティの過去を知る。
ベティは過去、薬物依存症に苦しみ、ヘロインの過剰摂取で亡くした最愛の兄がいた。ベティはその悲しみから抜け出せていないのだった。
ベティの告白から2人の距離はぐっと縮まった。
もちろんジェームズはまだ本当のことは告げられず、偽りのミュージシャンとして彼女との距離が縮んだのだった。
ジェームズはここ数日間、今までになく快調に物事が進んでいたことから、父の家で行うニューイヤーズパーティーにサプライズでボブと共におしかけた。
「もしかしたら、新しい家族が更生中の僕を受け入れてくれるかもしれない」と、ささやかな希望を胸にしていた。
しかし、現実は真逆の結果に終わる。
再婚妻の連れ子たちは、ジェームズの存在を怖がり悲鳴を上げ、ボブはその現状を嫌がり暴れる。
最悪の光景だった。
ジェームズは気を取り直して、またいつものストリートライブを開催。聴衆も賑わい、年末の悪夢から一刻も早く抜け出したいジェームズ。
しかし、通行人の無礼な行為が原因で、聴衆同士が喧嘩をしてしまいライブは中止。
ジェームスは監視カメラのおかげで無罪であるのを証明されるも、ストリートライブは厳禁に。
しかも薬物依存更生プログラムのスケジュールが乱れてしまい、そのうえボブは警察に預けられ離れ離れになってしまったことでパニックを引き起こすのだった。
パニック状態になったジェームズを、たまたま見かけてしまったベティ。
ベティはその姿から、すぐに薬物依存者だと気づき、混乱し、嘆くのだった。
うまくいっていたことが、また音を立てて崩れていくのを痛感するジェームズがいた。
ボブのために、立ち止まるのをやめないジェームズ
路上で歌えなくなったジェームズは、路上での雑誌販売員の仕事を始める。
やはりボブのおかげで街ゆく人からの人気者になり、雑誌も好調に売れる。
しかし、以前からそこで同じ雑誌販売をしていた同業者にとってはジェームズたちの存在はかなり不本意だった。
不満をつのらせた同業者と揉め事が起こり、ジェームズは1ヶ月業務謹慎処分になってしまった。
徐々に所持金も底をつき始め、食べ物がなくなってしまった。
ジェームズは自分のこと以上に、ボブを心配し守ろうと必死だった。
ギリギリの生活で1ヶ月を過ごし、雑誌販売員を再開するも復帰初日に通行人とまたトラブルが発生し、ボブも通行人の飼い犬に驚き、走り去ったまま姿を消してしまった。
どこを探しても、跡形もなく消えてしまったボブ。
ジェームズはボブを失ったことで、孤独と悲しみの渦の中に一気に引きずり込まれ、パニック状態に。
どんなに精神状態が不安定であっても、ジェームズはボブの帰りを待ち続けていた。
数日後、ボブは帰ってきた。いつもと同じ顔で可愛く鳴いていた。
ジェームズの新たな決意と戦い
ジェームズは、更生プログラムの次の段階へ進む決意を固めた。
それは毎日摂取している治療薬を断薬することで、想像を絶するつらさがあると知っていた。
しかし今はボブが自分の元へ帰ってきて、ボブは自分と一緒にいる。
ボブと一緒ならどんな難題も耐えて超えて行けると信じていたので、ヴァルもこの決断を受け入れた。
ジェームズは断薬治療のことをベティにアパートのドア越しから告げた。
未だベティとの仲は亀裂が入ったまま。
するとドアの向こうからベティの姿が。
彼女はジェームズを応援し、断薬中のサポートも受け入れてくれた。
断薬治療は間もなく開始した。
身体の中に潜む悪魔がうごめき、全身の痛みと 怠感、痺れ、人間の感覚が嫌うもの全てが同時にやってきたかのようだった。
それはまさに地獄絵図で、精神面も相当なダメージを受け、幻覚幻聴が始まり悲しみと苦しみに締め付けられるジェームズ。
ボブは真剣な眼差しでジェームズを見守り、始終部屋の片隅に座っていた。
ある朝、身体から悪魔が抜けた。落ち着きを取り戻して目を覚ますと横にはボブがいた。
新しい光、美しい世界
あたらしい朝を迎えたジェームズは、太陽の光、街の音、空気、目に写るもの、肌に感じるものの全てがクリアで鮮やかであることに驚いた。
別世界に来たような美しい世界に胸を震わせた。
晴れて薬物依存から更生したジェームズは、ベティからも祝福され、仲直りも。
そしてベティ自身もジェームズの決意と戦う姿に感銘を受け、彼女自身も悲しみから抜け出し新しい人生を歩むため引越しの準備をしていた。
そしてベティが手作りのプレゼントと共に、一通の手紙を渡す。それはジェームズが断薬治療中に、ベティが預かっていた郵便物。
届け人は出版社からで、父に薬物依存症から完全に更生したことを伝えに来たジェームズ。
反省とお詫びの言葉を並べる息子を前にすると、父は居ても立ってもいられなくなった。
そして父は息子に胸の内を明かすのだった。
今までずっとジェームズのことを愛し続けていて、幼きジェームズの写真を肌身離さず持ち歩いていた。
ただ、父親自身もどうやって薬物依存者と関わって良いのか分からず混乱していただけだったのだ。
二人は完全に和解して親子の愛を確かめ合い、父はボブのことを孫とも呼ぶようになっていた。
自伝出版でボブのもたらす幸運はつづく
出版社の手助けで、ジェームズは自身の実体験を綴った自伝を出版することになった。
出版記念イベントには、大勢のファンが集まった。
担当医のヴァル、父と再婚妻、ストリートミュージシャン時代からのファン、読者、そしてそこには新しい人生を歩むベティの姿も。
ベティは派手な化粧を卒業し、ますます美しくなっていた。
暖かいファンの前で、ジェームズはボブと共に感謝の意を伝えるのだった。
「誰にでもセカンドチャンスは訪れる」とメッセージを込めて。
その後、2012年出版されたこの本はベストセラーとなり、ジェームズはストリートミュージシャンと雑誌販売員を卒業。
現在はホームレスや動物のための慈善活動に従事。
そして今も彼の肩の上にはボブがいるのだった。
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映画「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」を見た感想と考察
映画「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」は若者のストリートミュージシャンが一匹の猫と出会ったことで、薬物依存症を更生し人生をやり直していく希望に溢れたストーリーです。
ジェームズの歌詞の強さと純粋な心は、観ている人に感動を倍増しで与えてくれます!
ボブがジェームズの前に現れる前から、ジェームズの歌う曲は前向きで希望に溢れる歌詞です。
確かに、薄汚れた姿で歌う映画序盤は歌詞とは全く伴っていませんが、ジェームズが純粋に希望を胸にしていたからこそ、ボブは彼を選んだのだと思います。
ボブ役の猫は、本人?本猫?のボブがほとんど出演しています!
万人から愛される無限大な魅力を放つ猫、ボブ。
映画の撮影は、ほとんどご本人猫のボブが演技をしています!
一般的には俳優猫を使いますが、やはりボブにしか出せない魅力が勝利しています。
表情豊かなボブで、特に音楽を聴いている時のお顔は最高に可愛いです。
また、猫のノドを鳴らす音は、高いヒーリング効果のある周波数だと科学的に証明されています。
それを狙っているのかは定かではありませんが、ゴロゴロとノドを鳴らす音が、劇中様々なところでかなり大音量で聞こえてきます。
ジェームズだけでに留まらず、観ている人にまでも癒し効果が期待できるかも?!
現実をリアルに描いています
華やかなロンドンのイメージとは一味違い、少し暗い道を行けば、ホームレスがたくさんいたり、薬物転売を若者がしていたり…。
サイレンの音も止まず、街はお世辞にも安全で綺麗とは言えません。
また、薬物依存の更生がいかに大変な戦いで、どんな生き地獄が待っているのかこの映画を観るだけで少し知ることができます。
現代では薬物に関した事件も少なくありません。
「薬物に関わっても良いことはゼロだな。」と肝に銘じることも可能なくらい、細部までリアルに描かれた映画をご堪能ください。
映画「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」を見た評価とまとめ
ベストセラーとなった実話を元に制作された映画。
実話が元ということだけあって、メッセージ性も強く出ています。
特別なCGなどなくても、人・猫?の演技だけでこれだけの強きメッセージが届けられるのは、ジェームズ本人の持つ反骨精神が基盤になっているからだと思います。
そこに癒しと幸運のボブが加われば鬼に金棒。
街に暮らす人の親切な心や無邪気な好奇心、そういった特別ではない自然な人間の姿に感動を覚える。
またジェームズが薬物更生してからのロンドンの街のシーンからは、日常はいかに美しい時間と人に溢れてるんだろうと、気付かせてくれる光景が見れます。
映画全体のテンポも良く、薬物依存症など重たいテーマも、疲れずに最後まで観れます。
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