かつて栄光を勝ち得た落ち目の中年レスラー、心臓発作からリタイアを余儀なくされた元レスラーが人生再生を模索していく。

プロボクサーの経験があるミッキー・ローク主演、第66回ゴールデングローブ賞主演男優賞の渾身作。

言葉通り体を張ったレスリングシーンの迫力と、日常を細々と意気繋ぐ中年の悲壮のギャップに生まれるリアリティに心震えるヒューマンドラマ。

そこで今回は映画「レスラー」のネタバレあらすじ結末や感想考察と評価など、総合的な情報をお届けします。

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映画「レスラー」の作品情報

【公開日】
2009年6月13日(日本)

【上映時間】
115分

【監督】
ダーレン・アロノフスキー

【製作】
ダーレン・アロノフスキー
スコット・フランクリン

【脚本】
ダーレン・アロノフスキー
ロバート・シーゲル

【出演者】

ミッキー・ローク(ランディ・“ザ・ラム”・ロビンソン)
マリサ・トメイ(キャシディ)
エヴァン・レイチェル・ウッド(ステファニー・ラムジンスキー)

映画「レスラー」のネタバレとあらすじ

伝説のレスラー、一世風靡から20年後・・・・

1980年代に一世を風靡したレスラー、ランディ。

かつての栄光に縛られ、現在ではスーパーマーケットでのアルバイトと掛け持ちで週末レスラーをしていました。

ランディの功績を知るレスラー仲間たちは彼への尊敬を惜しまず心からの称賛をおくっていましたが、過去は過去。

小さな会場でまばらな観客を相手に週末だけレスラーとなるランディは、トレーラーハウスの家賃すら払えない生活を送っていました。

そんなランディの数少ない楽しみは、ストリップバーの年長者キャシディに会いにいくこと。

キャシディもまたストリッパーとしての黄金期をとうに終え、客には「お母さんみたいだ」とバカにされる始末。

それでもそんな現実を飲み込み、その日の仕事を誠心誠意行うキャシディにランディは心惹かれていたのです。

突然のドクターストップ、不本意な引退へ

ギリギリの生活ながらも、大好きなレスラーになる時間と地位を維持して日々を楽しんでいたランディでしたが、ある日の試合終了後、嘔吐したかと思えばそのまま倒れこみます。

下された診断は、心臓発作。

目を覚ましたときにはすでに手術を終えており、胸には一筋の手術跡が。

次の発作での命の保証はなく、医師からはレスラーには戻れないことが申告されます。

その事実を受け止めきれないランディですが、身体は正直でした。

日々のトレーニングすらままならない身体から事態を受けとけたランディは、今後は試合をしないこと、自分は引退することをレスラー仲間に伝えます。

押し寄せるランディの孤独を、受け止めてくれる人は誰なのか

途方にくれたランディはキャシディに心臓発作の事実を打ち上げ、孤独が怖いこと、誰かに打ち明けたかったことを伝えます。

これまで客とストリッパーとしての一線をこえなかったキャシディは初めて店の外でランディと時間を設け、真摯に話を聞きます。

しかし誰かに打ち明けたいときには、私ではなくて自分の娘に電話しては?

キャシディの指摘はもっともでした。

これまでレスラーとしての人生を謳歌したがために家族をないがしろにし、一人娘のステファニーとはすっかり縁が切れていました。

しかし人生の局面を迎えたランディは、キャシディに背中をおされる形でステファニーに会いにゆきます。

最初の対面こそまったく相手にされなかったランディでしたが、キャシディの助言に従いながらステファニーと心を通わせてゆきます。

これまでの自分勝手に生きた人生を謝罪し、孤独な今、娘に嫌われるのが怖いと涙ながらにステファニーに許しを請うランディ。

絶縁を望んでいたステファニーはそんな父の姿に愛情の再来を覚え、父からのディナーの誘いを承諾するのでした。

疎遠になっていた娘との再会、関係の修復を図るランディ・

レスラーは引退したものの、人生はまだ続いてゆきます。

これまでパートタイムだったスーパーマーケットの仕事はフルタイムに変え、観客としてレスリング会場へ通うランディ。

伝説のレスラーであるランディは、どこへ行こうと暖かく迎え入れられます。

娘との復縁の兆しがあり、プレイヤーでなくなっても会場には自分の場所がある。

その一時の気持ちの緩みから、酒、ドラッグ、セックスを楽しんだランディは、ステファニーとのディナーの約束をすっぽかしてしまいます。

そのことに気づきステファニーの家へと謝罪に行くランディでしたが、ステファニーにとって父との約束が破られることは幼少のトラウマであり、一度の過ちではありませんでした。

改心したかのように見えた父はかつてと同じ人間であり、これ以上父親のために涙を流したくはない・・・。

正式に絶縁すること、もう顔を見せないでほしいことを宣告され、返す言葉もないランディは絶望とともにステファニーの家をあとにするのでした。

自分の居場所の確信、ランディが覚悟を決めるラストシーン

ステファニーとの繋がりが完全に断たれたランディ。

関係が変わっていくかと思われたキャシディとの仲でしたが、シングルマザーゆえに男女関係を作ることに消極的だったキャシディを強く求めたランディの押しの強さが仇となり、2人の間にははじめて溝が生まれていました。

失うものがないランディは、居場所を求めて再度のリング復帰を決意します。

かつて全盛期に会場を超満員にした伝説のマッチをした相手との再戦。

伝説のマッチをもう一度見ようと訪れた往年のファンたちで会場は超万人。

自分を好きだと言ったランディにつらく当たったことを後悔していたキャシディは、仕事をふりきってまで彼を追って会場へ。

ランディの心臓を心配して会場入り直前の彼に駆け寄ります。

自分が側にいるから無理をしないでほしい、戦わないで欲しいと懇願するキャシディでしたが、ランディは迷う様子もなく言い放ちます。

自分には外の現実の方が痛い、リングが俺の居場所だ、と。

自信にあふれた姿でリングへと上がるランディ、割れんばかりのファンの歓声。

挫折を味わい、大切なものを失ったけれど、俺にレスラーをやめろと言う資格があるのはここにいるファンだけだ!
これまで生きがいとなっていたファンたちの熱視線を力に、ついにはじまる対戦。

幾度となく苦し気な表情を見せるランディを対戦相手とレフェリーが気遣いますが、ファンを喜ばせたい一心で一撃、またもう一撃を見せつけます。

キャシディは会場を後にし、もうランディを見守ってはいません。

それでも脈打つ心臓を騙し騙しリングネットによじ登り、ランディは得意技「ラム・ジャム」を相手に食らわせ、レスラーとしての誇りを噛みしめるのでした。

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映画「レスラー」の感想と考察

ミッキー・ローク、自身の人生の物語

ランディを演じる主演のミッキー・ロークは1980年代に恋愛映画「ナインハーフ」でイケメン俳優として大ブレイク。
一躍名を知られますが、1990年代初頭にプロボクサーへと転身。

かつて母親の再婚相手の影響で幼少にボクシングの経験を積んでおり、なんとモハメド・アリと共にトレーニングしているのです。

そのボクシングも数年で引退すると、俳優業にカムバックするためにボクシングで傷んだ顔を整形。

ハリウッド復帰後にはイマイチ鳴かず飛ばずの筋肉俳優でしたが、この「レスラー」でいきなり米国アカデミー賞主演男優賞にノミネート。

かつての栄光、挫折、そこからファンの待つリンクへの復帰・・・これはまさにミッキー・ロークの人生そのものと言えます。

本作「レスラー」を監督したのはダーレン・アロノフスキーです。

「レスラー」での高評価の熱が冷めきらないうちに公開された「ブラック・スワン」でも数々の賞に輝きましたが、こちらでも主演のナタリー・ポートマンに彼女の生い立ちを追体験させるような役柄を与えています。

彼女が「ブラック・スワン」で演じたのは、母親から必要以上に手をかけて育てられた純粋な少女(白鳥)が、色気を放つ妖艶な女(黒鳥)へと目覚めてゆく役でした。

エリート家系に生まれ、名門大学を卒業、秀才で純なイメージ、「スター・ウォーズ」のアミダラ女王のような気品あふれるイメージが抜けなかったナタリー・ポートマン。

「ブラック・スワン」での過激な演技が評価され、この作品以降での役は大幅に広がっています。

アロノフスキーは適材適所の演技指導に長けているのかもしれません。

ランディという男のプライドの在り方

控室からレスリング会場へと向かう後姿と、倉庫から店頭へと出勤する後姿、2つのランディの後姿を対比させたショットがあります。

かたやこれまで守り抜いてきた自分の居場所へ向かうリングへの道、かたや気の進まない接客の場への道、対照的な心境にあるランディを、表情が見えない後ろ姿から比較するこのショット。

レスリングに生きてきた男、ランディの哀愁を引き立たせる印象的なものです。

ランディはプライドの高い男なのか、否か。

ランディは生活のために積極的にアルバイトの時間を増やしてゆきます。

貧相なトレーラーハウスをからかいにくる子供と全力で遊び、自分と同じように全盛期をすぎたストリッパーを指名しつづけ、後輩レスラーを尊敬する強さがあり、娘の前で涙を見せる素直さを持ち合わせている・・・。

プライドを捨てられない意固地さは、ランディから感じられないのです。

だからこそ、自分に向けられるファンの歓声という最後のプライドだけは捨てきることができなかった、そのラストシーンにランディの自分の生きざまへの思いが集約されて感情が高まるつくりになっています。

映画「レスラー」の評価とまとめ

映画「レスラー」の物語を一言で表すなら、どんな表現が相応しいでしょうか。

「栄光を失った男が再起、再びの栄光へ・・・」?

いいえ違います、リングで輝くランディの姿から一瞬そんなエンディングにも思えますが実際は違います。

ランディは家族を二度失い、唯一心の内を打ち明けられる女性からは見放され、最後に自分に歓声をあげるファンですら、その歓声は過去のランディにむけてのもの。

ランディは再びの栄光も、再起も、新しい生き方も手にしてはいません。

心臓には爆弾を抱え、癇癪で職場を飛び出して仕事を失い、完全な孤独状態となり、きっと最後の再戦で得る収入もたかがしれたものです。

むしろ物語のはじまったときよりも、終盤のほうが事態は深刻です。

それはこれまで自分のためだけに生きる道をきたランディの人生のツケであり、そこには支えてくれる女性がいる「ロッキー」のような希望はありません。

それでいて観客にとってはランディの喜びの感情だけが後味に残ります。

まったく改善されていないランディの人生の最後の悪あがきを、吹っ切れた気持ちの良さすら思わせる演出で見せているのが、この映画の魅力なのです。

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